アメフトが好きじゃない人は大抵
「あんなのガシガシとぶつかり合っているだけじゃないの。野蛮だわ」
というような印象があるかと思います。
ところがどっこい、アメフトは完璧な頭脳戦なんですね。
戦術はプレイ開始前にあらかじめヘッドコーチ(監督)や
コーディネーター等のスタッフによって決定されます。
スタジアムにはスタッフルームがあって、刻々と変化する試合状況を
徹底的に研究分析し、写真資料等も含めた膨大なデータを
フィールドサイドのヘッドコーチ(監督)に提供しています。
ヘッドコーチや戦術コーディネーターはそうしたデータを元に
次のプレイの作戦を決定し、マイクでもってQBに作戦を指示すると
(QBのヘルメットにはイヤホンが仕込まれています)
QBが他選手にそれを伝え、実行します。
フィールドサイドでQBが電話をしていたりするのは
そのスタッフルームとの打ち合わせ。
QBのリストバンドには戦術の乱数表がついていて、
時々それをチェックする姿も見られます。

たまに攻撃前に「オーディブルですね」という実況があります。
これはプレイ開始直前にQBが戦術を変更すること。
スタッフの考えた戦術が相手チームに読まれていると感じたら
QBは即座に独断で戦術を変更し、大声で他選手に伝えます。
QBがチームの要というのはそういうことです。
唯一「戦術を変更できる選手」なのです。
よって肉体的にも頭脳的にも優れたQBはチームの宝となります。

アメフトの戦術は非常に複雑です。
他スポーツ同様に「得点の多い方が勝ち」ですが、だからといって
「ただ点を獲ればいい」というような単純なゲームではありません。
「無理にタッチダウンを目指さずに、この際フィールドゴールだけでも
コツコツ入れて得点を積み重ねればいいじゃないか」等と
日本人的発想は実戦では通用しないことが多いです。
得点すれば自動的に相手に攻撃権が移るので
コツコツだろうとちまちまだろうと「点を獲る」ということは
それだけ相手に得点チャンスをガンガン与えることになります。
相手の攻撃を中断させるターンオーバーなんてビッグプレイは
やろうと思ってできるものではありません。
コツコツと地道に稼いだフィールドゴール2回分の得点は
タッチダウン1回でガツンと逆転されてしまいます。
タッチダウン3回分の得点に追いつくためには
フィールドゴールを7回決め、その間の7回分の相手の攻撃を
完璧に抑えなければいけないという非常に厳しい状態になります。

よって試合終了間際になると、無闇に得点を重ねるよりは
「如何に相手の攻撃チャンス、攻撃時間を減らすか」ということで
時間のコントロールが大事になってきます。
試合中、やたらと計時がストップするのはこのためです。

…でもってその緻密な戦術の果てに結局肉弾戦というあたりが
いかにもアメリカっぽい…褒めてます、念のため。
私個人は戦術よりも肉弾戦のほうが好きです。わかりやすい。

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